老後のお金について、こんなふうに思ったことはないでしょうか。
「結局、毎月いくら使っていいの?」「うちの貯金は、何歳まで持つの?」
これが分かりにくいのには理由があります。現金・NISA・企業型DC/iDeCo・年金は、それぞれ受け取り始める年齢も、取り崩し方も、税金のかかり方もバラバラだからです。しかも夫婦なら、その組み合わせが2人分。ざっくり「2,000万円あれば大丈夫」と言われても、自分の家に当てはまるのかは分かりません。
そこで、夫婦の資産をまとめて入れるだけで、毎月の手取りと資産の減り方が1年ごとに分かるシミュレーターを作りました。無料・登録不要、スマホでも使えます。この記事では使い方と、実際に数字を入れて分かったことを紹介します。
このツールでできる3つのこと
使い方①:資産を入力する
まず一番上で「シミュレーション開始年齢」を入れます。ここから100歳までを計算します。定年やリタイアを考えている年齢を入れてください。
そのあと、夫・妻それぞれの資産を入力します。ポイントは、資産の種類によって入力する項目が違うことです。
| 資産の種類 | 入力する項目 | ポイント |
|---|---|---|
| 💴 現金 | 残金/取崩し開始/毎月取崩し額(または取崩し率) | 利回りの欄はありません。残金だけ入れて取り崩さないこともできます(そのまま置いておく扱い)。 |
| 📈 NISA | 残金/取崩し開始/毎月取崩し額/利回り | 取り崩しながら、残りは運用が続く計算。税金はかかりません(非課税のため)。 |
| 🧾 企業型DC・iDeCo | 残金/受取開始/取崩し年数/利回り | 「月いくら」ではなく「何年で受け取るか」を指定。年数で受け取り切る金額を自動計算し、税金も自動で概算します。 |
| 🏛️ 年金 | 年間受給額/受給開始年齢の2つだけ | 残高ではなく「毎年入ってくる収入」。資産のグラフには含まれず、毎月の手取りに反映されます。 |
「毎月取崩し額」と「取崩し率(年%)」はどちらか入れれば、もう一方が自動で計算されます。「残高の4%ずつ使う」といった決め方をしたいときに便利です。
使い方②:結果を読む
入力すると、すぐ下に結果が出ます。見るところは4つです。
1. 一番大きな数字:資産が尽きる年齢
最初に目に入るのが「◯◯歳ごろに世帯資産が尽きます」という一文。ここがこのツールの結論です。100歳まで持つ場合は「100歳まで資産が持ちます」と緑色で表示されます。
2. グラフ:資産の減り方
夫・妻・世帯合計の3本の線で、資産がどう減っていくかが見えます。マウス(スマホは指)を合わせると、その年齢の金額が表示されます。「急に減り始めるのはいつか」が視覚的に分かります。
3. 表:1年ごとの手取り額
夫・妻・世帯合計の3つの表が出ます。項目ごとに「その年は毎月いくら受け取れるか」が並びます。
表の上のボタンで、「取崩し・受給額(額面)」と「手取り額」を切り替えられます。企業型DCと年金には税金がかかるので、額面と手取りでは金額が変わります。実際に使えるお金を知りたいときは「手取り額」で見てください。
年齢の横には健康寿命(男性73歳・女性76歳)と平均寿命(男性81歳・女性87歳)の目印が付きます。「元気に動ける間にいくら使えるか」を考える目安になります。
4. Excelでダウンロード
「📥 表をExcelでダウンロード」を押すと、夫・妻・世帯合計がシート分けされたExcelファイルが保存できます。家族と共有したり、自分で条件を書き足したいときにどうぞ。
モデルケース:世帯3,500万円の夫婦
実際に数字を入れてみます。60歳でリタイアする、貯蓄3,500万円の夫婦を想定しました。
結果はこうなりました。
| 年齢 | 夫 | 妻 | 世帯合計 | 年末の世帯資産 |
|---|---|---|---|---|
| 60歳 | 17万 | 5万 | 22万 | 3,301万円 |
| 65歳 | 28.4万 | 11.5万 | 39.9万 | 2,346万円 |
| 75歳 | 22.1万 | 11.5万 | 33.6万 | 1,033万円 |
| 85歳 | 14.1万 | 7.5万 | 21.6万 | 枯渇 |
この表から、3つのことが読み取れます。
- 60〜64歳は月22万円。年金がまだ出ないので、現金と企業型DCでつないでいる期間です。ここが一番細い。
- 65歳から月39.9万円。年金が始まってピークになります。
- 85歳で資産が尽き、そのあとは年金だけの月21.6万円。生活水準が半分近くまで落ちます。
「老後2,000万円問題」で語られるのは主に資産の総額ですが、実際に効いてくるのは「何歳で、月いくらに変わるのか」です。それが1年ごとに見えるのが、このツールの狙いです。
ぜひ試してほしい3つの実験
数字を1か所変えるだけで、結果が大きく動きます。実際に試した結果を紹介します。
実験①:毎月の取り崩しを3万円減らす
NISAの取り崩しを、夫8万→5万、妻4万→3万に減らしてみます(世帯で月4万円の節約)。
実験②:運用を続けるか、やめるか
リタイア後も運用を続ける場合と、全部現金にしてしまう場合を比べます。
実験③:年金を70歳まで繰り下げる
年金の受給を65歳から70歳に遅らせると、受給額が42%増えます(夫180万→256万、妻90万→128万)。資産寿命はどうなるでしょうか。
| 年齢 | 65歳から受給 | 70歳に繰下げ |
|---|---|---|
| 65歳 | 39.9万 | 19.4万 |
| 70歳 | 33.6万 | 42万 |
| 85歳〜 | 21.6万 | 30万 |
| 資産が尽きる年齢 | 85歳 | 85歳 |
面白いのは、資産が尽きる年齢は85歳で変わらないことです。繰り下げている5年間は資産を多く取り崩すので、そのぶん相殺されるからです。
ただし資産が尽きたあとが違います。月21.6万円と月30万円。その差は月8.4万円です。年金は死ぬまで続くので、繰り下げは「長生きしたときの保険」として効いてきます。逆に65〜69歳は手取りが約半分になるので、その間をしのげる現金があるかどうかが判断の分かれ目です。
このシミュレーションは概算です。次の点にご注意ください。
- 残っている資産は毎月、入力した利回りで運用しながら取り崩す前提です。実際の運用は上下に変動するため、このとおりにはなりません。
- 企業型DC・iDeCoと年金の税金は、年金形式での受け取りを想定した簡易計算です(公的年金等控除を差し引いた分に約15%)。一時金で受け取る場合や、他に収入がある場合は変わります。
- 物価上昇(インフレ)や、介護費・医療費などの大きな支出は含んでいません。
- 年金額はご自身のねんきん定期便やねんきんネットの見込額を入れてください。
実際の資金計画や税額は、金融機関・税理士・ファイナンシャルプランナー等にご確認ください。
まとめ:数字にすると、対策が具体的になる
今回のモデルケースで分かったことをまとめます。
- 3,500万円あっても、この使い方だと85歳で尽きる
- 毎月4万円ペースを落とせば100歳まで持つ
- 運用を続けるかどうかで、資産寿命は20年変わる
- 年金の繰り下げは資産寿命を変えないが、長生きしたときの生活水準が月8.4万円変わる
漠然と「老後が不安」と思っているうちは、何をすればいいのか分かりません。でも「85歳で尽きる」と数字が出れば、対策は具体的になります。月2万円だけ節約する、働く期間を2年延ばす、年金を繰り下げる——どれがどれだけ効くのか、その場で試せます。
入力した数字はお使いのブラウザにだけ保存され、どこにも送信されません。ぜひご自身の数字で試してみてください。